実効金利とは
銀行などの融資条件として、定期預金の積立や預金残高の維持を求められることがあります(拘束性預金、歩積両建)。この場合、表面上の融資金利よりも、実質的に負担している金利は高くなります。
計算式
実効金利 = ( 融資利息 − 預金利息 ) ÷ ( 融資残高 − 拘束預金残高 ) × 100
年率換算する場合は、期間で割って12を掛けます(本計算機では入力した期間(月)から自動換算)。
歩積両建(ぶづみりょうだて)とは
融資の実行と引き換えに、定期預金の積立等を求められる慣行。中小企業金融円滑化の観点から問題視されており、金融庁の監督指針でも禁止されています。
金融庁「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」では、II−3−1−7−2「正常な取引慣行に反する不適切な取引の発生の防止」の中で、「過度な協力預金、過当な歩積両建預金等の受入れ」を、独占禁止法上の優越的地位の濫用に当たるおそれのある取引として挙げています。
このページの使いどころ
借入と同時に定期預金や積立を求められた中小企業の経営者・経理担当者が、「表示上は年3%の借入でも、自由に使えない預金を差し引くと実際には何%の負担なのか」を確かめるための計算機です。金利の表示形式(表面金利と実質金利、複利周期の違い)を換算したいだけなら金利変換計算機、借入の返済額そのものを見たいなら借入返済計算機のほうが目的に合います。
計算手順と数値例
例1:融資1,000万円・融資利息30万円、拘束預金200万円・預金利息1万円、期間12か月(初期値)
① 表面金利:30 ÷ 1,000 ÷ (12÷12) × 100 = 3.0%
② 実際に使える資金:1,000 − 200 = 800万円
③ 実際の利息負担:30 − 1 = 29万円
④ 実効金利:29 ÷ 800 ÷ (12÷12) × 100 = 3.625%
拘束預金があるだけで、負担は表面金利より 0.625ポイント高くなります。
例2:拘束預金が500万円に増えた場合(その他は例1と同じ)
使える資金 500万円、利息負担 29万円。実効金利 = 29 ÷ 500 × 100 = 5.8%。借入額の半分が拘束されると、負担はほぼ倍になります。
例3:期間6か月で融資利息15万円・預金利息0.5万円(残高は例1と同じ)
表面金利 = 15 ÷ 1,000 ÷ (6÷12) × 100 = 3.0%、実効金利 = 14.5 ÷ 800 ÷ 0.5 × 100 = 3.625%。期間が違っても年率に直せば例1と同じ結果になります。利息は「期間中の合計額」を入れる点に注意してください。
早見表:拘束預金の額と実効金利
融資1,000万円・融資利息30万円(表面3.0%)・期間12か月、預金利息は拘束預金の年0.1%(拘束額 × 0.001 万円)と仮定。
| 拘束預金残高 | 預金利息 | 使える資金 | 実効金利 |
|---|---|---|---|
| 0万円 | 0万円 | 1,000万円 | 3.0000% |
| 100万円 | 0.1万円 | 900万円 | 3.3222% |
| 200万円 | 0.2万円 | 800万円 | 3.7250% |
| 300万円 | 0.3万円 | 700万円 | 4.2429% |
| 500万円 | 0.5万円 | 500万円 | 5.9000% |
| 700万円 | 0.7万円 | 300万円 | 9.7667% |
預金利息が付いても実効金利の上昇はほとんど相殺されません。拘束される「額」が負担を決めます。
早見表:表面金利別・拘束預金額別の実効金利
融資1,000万円・期間12か月、預金利息は拘束預金の年0.1%と仮定。表面金利が高いほど、同じ拘束額でも上乗せ幅(実効−表面)が大きくなります。
| 表面金利 | 拘束100万円 | 拘束200万円 | 拘束300万円 | 拘束500万円 |
|---|---|---|---|---|
| 2.0%(利息20万円) | 2.2111% | 2.4750% | 2.8143% | 3.9000% |
| 3.0%(利息30万円) | 3.3222% | 3.7250% | 4.2429% | 5.9000% |
| 4.0%(利息40万円) | 4.4333% | 4.9750% | 5.6714% | 7.9000% |
| 5.0%(利息50万円) | 5.5444% | 6.2250% | 7.1000% | 9.9000% |
計算式:(融資利息 − 拘束預金 × 0.1%)÷(1,000万円 − 拘束預金)× 100。表面2.0%で拘束200万円の場合、(20 − 0.2)÷ 800 × 100 = 2.475%。
拘束預金を解除して繰上返済した場合の差額
実効金利は「交渉して何が変わるか」を金額で示すのにも使えます。例1(融資1,000万円・利息30万円・拘束預金200万円・預金利息1万円)で、拘束預金200万円の解除を認めてもらい、その200万円をそのまま繰上返済に充てたとします。借入は800万円に減り、表面金利3.0%のままなら年間の利息は800万円 × 3.0% = 24万円です。現状の実質負担(30万円 − 1万円 = 29万円)と比べると、年間5万円の負担減になります。手元の資金は「使える800万円」で変わらないのに、利息だけが減る計算です。
逆に金融機関から「預金は解除できないが金利は下げられる」と提案された場合は、この計算機で「下げた後の融資利息」を入れ直し、実効金利が解除案と同じ3.0%まで下がるかを確かめます。例1なら、融資利息が25万円(表面2.5%)になれば実効金利は(25 − 1)÷ 800 × 100 = 3.0%で、解除して繰上返済した場合と同じ負担になります。
実務上の落とし穴
- 返済が進んで残高が変わる融資:融資残高には期間中の平均残高を入れます。期首1,000万円・期末800万円で均等に減っていくなら、おおよそ900万円です。利息27万円・拘束預金なしなら 27 ÷ 900 × 100 = 3.0%で、期首残高1,000万円のまま計算すると2.7%と実態より低く出ます。
- 預金利息の税引前・税引後:預金利息には受取時に20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%+住民税5%)が源泉徴収されます。通帳に入る金額は税引後なので、融資利息(税引前の支払額)と比べるときは、税引前の利息額(税引後の額 ÷ 0.79685)に戻してから入力すると条件がそろいます。
- 複数の融資と預金がある場合:融資ごとに拘束預金が紐付いているなら融資ごとに計算し、まとめて「預金を〇円維持」と求められているなら融資残高と利息を合算して1件として計算します。混ぜると、どの融資の負担が重いかが見えなくなります。
- 借換えの比較:借換え先に拘束預金がなくても、事務手数料・保証料・繰上返済手数料は利息と同じく負担です。比較するときは、借換えにかかる費用を「融資利息」に足してから実効金利を出すと、公平に比べられます。
計算結果の読み方
「表面 融資金利(年率)」は預金を無視した場合の借入金利で、契約書に書かれた金利に近い値になります。「実効金利」との差が、拘束預金によって上乗せされている実質的なコストです。差が大きいほど、預金の拘束解除や金利引き下げを交渉する根拠になります。単位はすべて万円で、期間は月数で入力します。
よくある間違い・注意点
- 単位は「万円」:融資残高1,000万円なら「1000」。円で入れると桁が4つずれます(利息と残高を同じ単位でそろえれば比率は変わりません)。
- 利息は期間中の合計:月々の利息額ではなく、入力した期間(月)に支払った利息の合計を入れます。年率換算は計算機が行います。
- 自由に引き出せる預金は含めない:拘束預金は「融資の条件として引き出せない預金」だけです。通常の運転資金の残高を入れると実効金利が過大になります。
- 預金利息の税引前後をそろえる:融資利息が税引前の支払額なら、預金利息も税引前の受取額で比べます。
- 拘束預金が融資残高以上だと計算できない:使える資金がゼロ以下になるため実効金利は0と表示されます。
関連する計算機
- 借入返済計算機:借入の毎月返済額と総利息を確認する
- 表面金利・実質金利の変換:複利周期の違いによる利率の換算
- 単利計算機:日数ベースで利息額を計算する
- 延滞金計算機:支払いが遅れた場合の延滞金を計算する