減価償却とは
建物・機械・車両など、長期間にわたって使用する固定資産の取得費用を、その耐用年数にわたって費用として配分する会計処理。法人税法・所得税法上、限度額の範囲内で各事業年度の損金(必要経費)に算入できます。
この計算機は「取得価額」「耐用年数」「初年度の使用月数」「端数処理」を入れると、定額法または200%定率法で1年目から簿価1円になるまでの償却スケジュールを作り、特別償却なし・30%特別償却・100%即時償却の3パターンを並べて表示します。決算前に「今期いくら経費にできるか」「特別償却を使うと初年度の利益がどれだけ圧縮されるか」を見比べる用途を想定しています。個人事業主は原則として定額法、法人は建物・建物附属設備・構築物以外の資産について定率法が原則(届出で定額法に変更可)です。
償却方式
- 定額法:毎年同額を償却。償却額 = 取得価額 × 定額法償却率
- 定率法(200%定率法):期首簿価 × 償却率。償却保証額を下回ったら改定償却率で均等償却。平成24年4月1日以降取得分が対象
特別償却制度(令和8年度版)
通常の減価償却に上乗せして、初年度に一定割合を追加で償却できる税制優遇措置です。中小企業の設備投資を促進する目的で複数の制度があります。
- 30%特別償却:中小企業投資促進税制(青色申告法人・個人事業主)。機械装置(160万円以上)、ソフトウェア(70万円以上)等が対象。
- 100%即時償却:中小企業経営強化税制(A・B類型)。経営力向上計画の認定を受け、生産性向上設備(A類型)・収益力強化設備(B類型)に該当する場合に適用可能。
- その他:研究開発税制、特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却、地域未来投資促進税制 など多数あります。
計算式と手順
国税庁タックスアンサーNo.2106の式をそのまま使っています。
- 定額法:各年の償却額 = 取得価額 × 定額法の償却率(耐用年数5年なら0.200)。初年度は × 使用月数 ÷ 12。
- 定率法:各年の償却額 = 期首の未償却残高 × 定率法の償却率(5年なら0.400)。この額が「償却保証額(取得価額 × 保証率)」を下回った年からは、その年の期首簿価を「改定取得価額」として × 改定償却率(5年なら0.500)で毎年同額を償却します。
- 共通:最終年は「期首簿価 − 1円」を償却し、備忘価額1円を残します。端数処理は選んだ方法で毎年の償却額に適用します。
例1:取得価額100万円・耐用年数5年・12ヶ月使用・切捨て(初期値)
- 定額法:毎年 1,000,000 × 0.200 = 200,000円。1〜4年目が200,000円、5年目は199,999円で簿価1円。
- 定率法:1年目 1,000,000 × 0.4 = 400,000円、2年目 600,000 × 0.4 = 240,000円、3年目 360,000 × 0.4 = 144,000円。4年目は 216,000 × 0.4 = 86,400円で償却保証額108,000円(1,000,000 × 0.108)を下回るため改定償却に切り替え、216,000 × 0.5 = 108,000円。5年目は107,999円で簿価1円。
- 5年間の合計はどちらも999,999円ですが、定率法は1年目に40%を落とすので、初年度の経費は2倍になります。
例2:同じ資産を決算の4ヶ月前に取得した場合(初年度使用月数4)
- 定額法:1年目 1,000,000 × 0.200 × 4 ÷ 12 = 66,666円(切捨て)。2年目以降は200,000円ずつで、6年目に133,333円を償却して終わります。
- 定率法:1年目 1,000,000 × 0.4 × 4 ÷ 12 = 133,333円。2年目は残高866,667 × 0.4 = 346,666円。
例3:例1に特別償却を上乗せ(定額法)
- 30%特別償却:初年度 200,000 + 1,000,000 × 30% = 500,000円。2・3年目200,000円、4年目99,999円で償却が終わり、通常より1年早く簿価1円になります。
- 100%即時償却:初年度に999,999円を償却し、2年目以降はゼロです。
早見表:取得価額100万円・12ヶ月使用の初年度償却額(切捨て)
| 耐用年数 | 定額法(償却率) | 定率法(償却率) | 定額法+30%特別償却 |
|---|---|---|---|
| 4年(軽自動車) | 250,000円(0.250) | 500,000円(0.500) | 550,000円 |
| 5年(サーバー等) | 200,000円(0.200) | 400,000円(0.400) | 500,000円 |
| 6年(普通自動車) | 167,000円(0.167) | 333,000円(0.333) | 467,000円 |
| 10年(機械装置の例) | 100,000円(0.100) | 200,000円(0.200) | 400,000円 |
| 22年(木造建物) | 46,000円(0.046) | 建物は定額法のみ | — |
※ 取得価額が2倍なら償却額も2倍です(100万円 → 200万円なら定額法5年で400,000円)。平成10年4月1日以後に取得した建物、平成28年4月1日以後に取得した建物附属設備・構築物は定額法のみです(国税庁タックスアンサーNo.2100)。
よくある間違い・注意点
- 少額資産の特例を忘れる:取得価額10万円未満は全額その年の経費、20万円未満は3年で均等償却(一括償却資産)を選べます。さらに青色申告の中小企業者等には、取得価額30万円未満の資産を全額即時に経費にできる特例(年300万円まで。国税庁タックスアンサーNo.5408では令和8年3月31日までの取得分が対象)があり、令和8年4月1日以後の取得分は令和8年度税制改正で上限の見直しが行われているため最新の公式情報を確認してください。これらは耐用年数によらないので、この計算機を使う前に金額で判定してください。
- 使用月数は「取得日」ではなく「使い始めた日」から数える:納品されても事業に使っていない期間は償却できません。3月決算で1月20日に使い始めたら、1月20日〜3月31日は2ヶ月と12日 → 切り上げて3ヶ月です。
- 定率法で「償却率を毎年同じ額に掛ける」:定率法は取得価額ではなく「期首の未償却残高」に掛けます。取得価額に掛け続けると2年目以降が大きくなりすぎます。
- 中古資産は法定耐用年数をそのまま使わない:中古で買った資産は「法定耐用年数 − 経過年数 + 経過年数 × 20%」(1年未満切捨て、2年未満は2年)で見積もった耐用年数を使えます。4年落ちの普通車(法定6年)なら 6 − 4 + 4 × 0.2 = 2.8 → 2年です。
- 特別償却は「上乗せ」であって耐用年数の合計は変わらない:30%特別償却をしても償却できる総額は取得価額 − 1円のままで、後の年の償却額がその分減ります。節税ではなく「前倒し」です。
関連する計算機
- 交際費 損金不算入額シミュレーター — 決算での加算項目をあわせて確認
- インボイス仕入税額控除額シミュレーター — 設備購入時の消費税の控除額
- 寄附金 損金算入限度額シミュレーター — 法人税の損金算入限度額の計算
残存簿価1円
平成19年4月1日以降取得資産は、減価償却後の帳簿価額が「1円」となるまで償却できます(備忘価額)。