売上原価とは
販売した商品・製品に直接対応する原価。「三分法」と呼ばれる以下の計算式が一般的です。
売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 − 期末商品棚卸高
損益計算書(P/L)で売上高から差し引き、売上総利益(粗利)を算出します。
関連指標
- 粗利率(売上総利益率) = 粗利 ÷ 売上高 × 100
- 売上原価率 = 売上原価 ÷ 売上高 × 100
- 商品回転率 = 売上原価 ÷ 平均棚卸高
この計算機で分かること・誰がいつ使うか
個人事業主が確定申告で作る「収支内訳書」「青色申告決算書」、法人が作る損益計算書には、いずれも売上原価の欄があります。国税庁の「青色申告の決算の手引き」でも、必要経費になる売上原価は仕入高そのままではなく「年初(期首)の棚卸高+年間の仕入高−年末(期末)の棚卸高」で計算すると説明されています。本計算機はこの3つの金額を入れると売上原価を出し、売上高も入れれば粗利(売上総利益)・粗利率・原価率まで一度に表示します。決算前に「今年はどのくらい利益が出るか」を見積もるとき、月次で粗利率の変化を追うとき、棚卸をした後に原価を確定するときに使います。
計算手順と数値例
初期値(期首 1,000,000円、仕入 5,000,000円、期末 1,500,000円、売上 8,000,000円)で手順を追います。
- 期首在庫と仕入を足す:1,000,000 + 5,000,000 = 6,000,000円(この期に売れる状態にあった商品の総額)
- 売れ残った期末在庫を引く:6,000,000 − 1,500,000 = 売上原価 4,500,000円
- 売上高から引く:8,000,000 − 4,500,000 = 粗利 3,500,000円
- 粗利率 = 3,500,000 ÷ 8,000,000 × 100 = 43.75%、原価率 = 4,500,000 ÷ 8,000,000 × 100 = 56.25%
2例目は在庫が減った年です。期首 500,000円、仕入 3,000,000円、期末 400,000円、売上 5,000,000円なら、売上原価は 500,000 + 3,000,000 − 400,000 = 3,100,000円で、仕入高(3,000,000円)より10万円多くなります。期首より期末の在庫が減った分は「前から持っていた商品を売った」ことになるので、その分だけ原価が増えるという関係です。粗利は 1,900,000円、粗利率は 38.00%です。
早見表(単位:円)
| 期首棚卸高 | 仕入高 | 期末棚卸高 | 売上高 | 売上原価 | 粗利 | 粗利率(%) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1,000,000 | 5,000,000 | 1,500,000 | 8,000,000 | 4,500,000 | 3,500,000 | 43.75 |
| 500,000 | 3,000,000 | 400,000 | 5,000,000 | 3,100,000 | 1,900,000 | 38.00 |
| 0 | 2,000,000 | 600,000 | 3,000,000 | 1,400,000 | 1,600,000 | 53.33 |
| 2,000,000 | 10,000,000 | 2,500,000 | 15,000,000 | 9,500,000 | 5,500,000 | 36.67 |
| 300,000 | 1,200,000 | 300,000 | 2,000,000 | 1,200,000 | 800,000 | 40.00 |
3行目は開業初年度(期首在庫ゼロ)の例です。最後の行のように期首と期末の在庫が同額なら、売上原価は仕入高と一致します。在庫が増えた年は原価が仕入より小さく、減った年は大きくなります。
在庫の回転を見る(商品回転率と在庫日数)
売上原価が出ると、在庫がどのくらいの速さで入れ替わっているかも計算できます。初期値の例では、平均棚卸高 =(期首1,000,000円 + 期末1,500,000円)÷ 2 = 1,250,000円、商品回転率 = 売上原価4,500,000円 ÷ 1,250,000円 = 3.6回です。1年を365日として 365 ÷ 3.6 = 約101日が「仕入れた商品が売れるまでの平均日数」になります。同じ売上原価でも期末在庫が3,000,000円に膨らめば平均棚卸高は2,000,000円、回転率は2.25回(約162日)に落ちます。粗利率が変わらないのに資金繰りが苦しいときは、この回転率が下がっていないかを確かめると原因が見つかることがあります。
月次で使う場合
年度末だけでなく、月ごとの粗利率を追うときも同じ式が使えます。月初在庫1,500,000円・当月仕入450,000円・月末在庫1,400,000円・当月売上800,000円なら、当月の売上原価は 1,500,000 + 450,000 − 1,400,000 = 550,000円、粗利は250,000円、粗利率は31.25%です。仕入450,000円だけを見ると「仕入が少ないから利益が出ている」ように見えますが、在庫を100,000円取り崩しているため、実際の原価は仕入より大きくなっています。月末在庫を毎月数えるのが難しい場合は、売価に平均原価率を掛けて在庫を推定する方法(売価還元法の考え方)で代用できますが、年末は必ず実地棚卸で確定させてください。
実務上の落とし穴
- 自分で使った商品(家事消費)は売上に入れる:国税庁の「青色申告の決算の手引き」では、家事消費した商品などは収入金額に含めるとされています。仕入れた商品を自宅で使ったり家族に渡したりした分は、期末在庫にも残らず売上にも立たないままだと、売上原価だけが増えて利益が実態より小さく計算されます。
- 評価方法を届け出ていないと最終仕入原価法になる:期末棚卸高の評価は、税務署に届け出た方法(先入先出法・総平均法・売価還元法・低価法など)で行いますが、届出がない場合は「最終仕入原価法」(年末に最も近い時期に仕入れた単価 × 数量)で評価します。同じ在庫数でも評価方法で期末棚卸高が変わり、売上原価もその分だけ動きます。
- 破損品・流行遅れの在庫は別扱いにできる:災害で損傷したり、棚ざらし・流行遅れで通常の価格では売れなくなった商品は、他の在庫と区別して12月31日時点の処分可能価額で評価することができます。定価のまま在庫に残すと期末棚卸高が過大になり、売上原価が小さく(利益が大きく)出ます。
- 消耗品にも同じ式がある:未使用の包装材料・ガソリン・事務用品などの消耗品費も「期首棚卸高 + 購入高 − 期末棚卸高」で計算します。ただし通常より特に増えていなければ棚卸を省略できます。商品の売上原価とは別の科目なので、本計算機には商品分だけを入れてください。
- 引取運賃や関税は仕入高(取得価額)に含める:所得税法施行令第103条では、購入した棚卸資産の取得価額は「購入の代価」に引取運賃・荷役費・運送保険料・購入手数料・関税など購入のために要した費用を加えた額とされています。商品代金3,000,000円に引取運賃120,000円と関税80,000円がかかった場合、仕入高は3,200,000円です。送料を「荷造運賃」などの経費に分けて入力すると、売上原価と粗利率が実態からずれます。
- 前年の期末棚卸高を修正したら期首も直す:前年分を修正申告して期末棚卸高が変わった場合、本年の期首棚卸高も同じ額に直します。ここが食い違うと、変えた金額がそのまま本年の利益の誤差になります。
よくある間違い・注意点
- 期首棚卸高は前年の期末棚卸高と同じ金額:前年の決算書に書いた期末棚卸高をそのまま使います。ここがずれると2年分の利益が連動して狂います。
- 期末の棚卸を省くと原価が過大になる:期末在庫を0円のままにすると、売れ残った商品まで当期の原価に入り、利益が実態より小さく計算されます。国税庁の手引きでは棚卸は12月31日に行うとされています(多忙な場合は前後の日でも可、その間の増減を調整)。
- 仕入値引・返品は仕入高から引く:値引きや返品があった場合、仕入高は総額ではなく差し引き後の純仕入高で入力します。
- 税込・税抜をそろえる:4つの入力を税込と税抜で混ぜると粗利率が狂います。経理方式(税込経理・税抜経理)に合わせて統一してください。
- 製造業・サービス業は式が変わる:製造業は仕入高の代わりに「製品製造原価」が入り、材料・仕掛品の棚卸も必要です。人件費が中心のサービス業では売上原価を計上しない場合もあります。
関連する計算機
- 減価償却 計算機:売上原価と並ぶ主要な必要経費
- インボイス仕入税額控除額シミュレーター:仕入にかかる消費税の控除額
- 商業輸入 関税計算機:輸入仕入の関税・消費税を含めた仕入原価