電磁波 媒質特性計算機
電磁波が媒質を通過するときの波長・反射率・透過率・電力半減深度・表皮厚みを計算。電磁波シールド設計・基板設計・電波吸収体の検討に。
入力
媒質の種類
計算結果
波長
| 真空中の波長 λ₀ | 124.9135 mm |
| 媒質中の波長 λ_m | 59.5502 mm |
反射・透過(空気からの垂直入射)
| 媒質インピーダンス Z | 179.5991 Ω |
| パワー反射率 |Γ|² | 12.5559 % |
| パワー透過率 | 87.4441 % |
電力半減深度(絶縁体損失)
| 電力が半分になる距離 | 328.4723 mm |
電磁波と媒質の関係
電磁波が媒質(絶縁体・導体)を通過するとき、その挙動は媒質の電気的特性(比誘電率 εr、誘電正接 tan δ、比透磁率 μr、電気抵抗率 ρ)に依存します。本ツールは、電磁波シールド設計・基板設計・電波吸収体の検討で必要な5つの代表的な物理量を計算します。
使い方は、周波数を MHz で入れ、材料が「絶縁体(誘電体)」か「導体(金属)」かを選んで、材料定数を入力(またはプリセットを選択)するだけです。絶縁体なら真空中と媒質中の波長・媒質インピーダンス・空気からの垂直入射での反射率と透過率・損失による電力半減深度が、導体なら表皮厚み・表面インピーダンス・反射率が表示されます。真空中の波長は光速 c = 299,792,458 m/s(SI 定義値)と自由空間インピーダンス η₀ ≒ 376.73 Ω を使って計算しています。 「この金属箔の厚みで 2.4 GHz を遮蔽できるか」「この壁を Wi-Fi の電波がどれだけ透過するか」「基板の中で信号の波長はどこまで縮むか」といった材料側の問いに答える計算機で、周波数と波長の単純な換算は周波数⇔波長 変換計算機が担当します。
計算する物理量
- 真空中の波長 λ₀:λ₀ = c/f(光速 ÷ 周波数)
- 媒質中の波長 λ_m:λ_m = λ₀ / √(εr × μr)(絶縁体)
- 反射率 |Γ|²:媒質境界での電力の戻り割合(空気からの垂直入射)
- 透過率 1 − |Γ|²:媒質に進入する電力の割合
- 電力半減深度:絶縁体内で電力が半分に減衰する距離(tan δ > 0 のとき)
- 表皮厚み δ:導体内で電界振幅が 1/e(約 36.8%)になる距離
主要な公式
λ_m = λ₀ / √(εr × μr) [絶縁体]
Z = η₀ × √(μr/εr)、η₀ ≈ 377 Ω
Γ = (Z − η₀) / (Z + η₀) 反射係数
電力半減深度 = ln(2) / (2α)、α ≈ (ω/c)√(εr·μr)·(tan δ / 2)
表皮厚み δ = √(2ρ / (ωμ₀))[導体・μr=1の場合]
計算の手順と具体例
初期値の 2,400 MHz・FR-4 基板(εr = 4.4、tan δ = 0.02、μr = 1) を手計算で追うと次のようになります(ω = 2πf = 1.508×10¹⁰ rad/s)。
- 真空中の波長 λ₀ = 299,792,458 ÷ 2.4×10⁹ = 0.1249 m = 124.9 mm
- 媒質中の波長 λ_m = 124.9 ÷ √4.4 = 124.9 ÷ 2.098 = 59.6 mm(真空中の約48%に縮む)
- 媒質インピーダンス Z = 376.73 × √(1 ÷ 4.4) = 179.6 Ω
- 反射係数 Γ = (179.6 − 376.73) ÷ (179.6 + 376.73) = −0.354 → パワー反射率 |Γ|² = 12.6%、透過率 = 87.4%
- 減衰定数 α = (ω ÷ c) × √4.4 × (0.02 ÷ 2) = 50.30 × 2.098 × 0.01 = 1.055 /m → 電力半減深度 = ln2 ÷ (2 × 1.055) = 0.328 m = 約328 mm
同じ 2,400 MHz で導体を「銅(ρ = 1.68×10⁻⁸ Ωm)」にすると、表皮厚み δ = √(2 × 1.68×10⁻⁸ ÷ (1.508×10¹⁰ × 4π×10⁻⁷)) = 約1.33 μm、表面インピーダンス |Zs| = √(ω μ₀ ρ) = 約0.018 Ω となり、η₀ との差が極端に大きいためパワー反射率は 99.98%、透過率は 0.02% です。つまり 2.4 GHz の電波に対して、銅は表面でほぼ全反射し、入り込んだ成分も数 μm で 1/e に減衰します。
早見表1:銅の表皮厚みと周波数
表皮厚み δ は周波数の平方根に反比例します(δ ∝ 1/√f)。銅(ρ = 1.68×10⁻⁸ Ωm、μr = 1)について、商用電源からミリ波まで並べると次のとおりです。
| 周波数(用途の例) | 表皮厚み δ(銅) | 5δ(シールド厚の目安) |
|---|---|---|
| 50 Hz(商用電源) | 9.2 mm | 46 mm |
| 1 kHz(オーディオ) | 2.06 mm | 10.3 mm |
| 100 kHz(スイッチング電源) | 206 μm | 1.03 mm |
| 1 MHz(AMラジオ帯) | 65.2 μm | 326 μm |
| 100 MHz(FMラジオ帯) | 6.52 μm | 32.6 μm |
| 1 GHz(携帯電話帯) | 2.06 μm | 10.3 μm |
| 2.4 GHz(Wi-Fi) | 1.33 μm | 6.7 μm |
| 28 GHz(5G ミリ波) | 0.39 μm | 1.9 μm |
※ 2.4 GHz ではアルミ 1.67 μm、鉄 3.20 μm(μr = 1 として)、ステンレス SUS304 8.72 μm。一般的な銅箔(18〜35 μm)は GHz 帯では 5δ を十分に超えます。
早見表2:2.4 GHz における材料別の波長・反射率・電力半減深度
プリセットの材料定数(上の εr・tan δ 表)を使い、Wi-Fi でよく問題になる 2.4 GHz で比較しました。反射率は空気から材料への垂直入射の値です。
| 材料(εr / tan δ) | 媒質中の波長 | インピーダンス Z | パワー反射率 | 電力半減深度 |
|---|---|---|---|---|
| PTFE(2.1 / 0.0002) | 86.2 mm | 260.0 Ω | 3.4% | 約47.5 m |
| ポリエチレン(2.3 / 0.0005) | 82.4 mm | 248.4 Ω | 4.2% | 約18.2 m |
| FR-4 基板(4.4 / 0.02) | 59.6 mm | 179.6 Ω | 12.6% | 328 mm |
| コンクリート乾燥(6 / 0.05) | 51.0 mm | 153.8 Ω | 17.7% | 113 mm |
| ガラス(7 / 0.005) | 47.2 mm | 142.4 Ω | 20.4% | 約1.04 m |
| アルミナ(9.8 / 0.0001) | 39.9 mm | 120.3 Ω | 26.6% | 約44 m |
| 純水(80 / 0.04) | 14.0 mm | 42.1 Ω | 63.8% | 38.5 mm |
※ 電力半減深度は tan δ が小さいときの近似式で求めた値です。水のように tan δ が大きい材料や、含水率で εr が大きく変わるコンクリートでは、実測値と差が出ることがあります。
代表的な材料の比誘電率(εr)と誘電正接
| 材料 | εr | tan δ(@ 1GHz) |
|---|---|---|
| 空気・真空 | 1.0 | 0 |
| PTFE(テフロン) | 2.1 | 0.0002 |
| ポリエチレン | 2.3 | 0.0005 |
| FR-4 基板 | 4.4 | 0.02 |
| ガラス(一般) | 7 | 0.005 |
| アルミナ | 9.8 | 0.0001 |
| 純水(液体) | 80 | 0.04 |
| コンクリート(乾燥) | 6 | 0.05 |
主要な金属の電気抵抗率(20℃)
| 金属 | ρ [Ωm] |
|---|---|
| 銀 | 1.59 × 10⁻⁸ |
| 銅 | 1.68 × 10⁻⁸ |
| 金 | 2.44 × 10⁻⁸ |
| アルミニウム | 2.65 × 10⁻⁸ |
| 鉄 | 9.71 × 10⁻⁸ |
| ステンレス SUS304 | 7.2 × 10⁻⁷ |
よくある使い方
- 電磁波シールド設計:表皮厚みの数倍以上の金属厚みで効果的にシールド
- 基板設計:FR-4 内の波長から伝送線路の長さ・反射係数を見積もる
- 電波吸収体検討:媒質中の電力半減深度から必要な厚みを計算
- 建材の電波透過性:コンクリート壁・ガラスでの電波減衰を予測
- 電子レンジ設計:水分(εr=80, tan δ=0.04)での電力吸収特性
よくある間違い・注意点
- 周波数の単位は MHz:2.4 GHz なら「2400」と入力します。「2.4」と入れると 2.4 MHz の計算になり、表皮厚みは約32倍(√1000 倍)厚く、波長は1,000倍長く出ます。
- 反射率は「垂直入射・平面波」の値:斜めに当たる電波や曲面では反射率が変わります。また反射率が低い材料でも、厚みが波長の 1/4 や 1/2 に近いと多重反射で透過率が大きく変わる(干渉する)ため、薄板の設計では別途考慮が必要です。
- 電力半減深度は低損失近似:α ≒ (ω/c)√(εr μr)(tan δ/2) は tan δ が 1 よりずっと小さいときの近似です。水(tan δ = 0.04)程度までは目安になりますが、湿ったコンクリートや生体組織のように損失が大きい材料では精度が落ちます。
- 導体は μr = 1 で計算している:鉄・ニッケル・パーマロイなどの磁性金属は μr が数百〜数千になり、実際の表皮厚みは表示値の 1/√μr に薄くなります。磁性材料のシールド設計では別途補正してください。
- 材料定数は周波数と温度で変わる:水の εr は GHz 帯で急激に下がり、FR-4 の tan δ も周波数で変わります。プリセット値は代表値なので、精密設計ではメーカーのデータシートの周波数別の値を入力してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 比誘電率と誘電正接の違いは?
Q. 表皮厚みより薄い金属でも電磁波を遮蔽できる?
Q. 高周波になるほど表皮厚みは薄くなる?
Q. 反射率が高いほどシールド性能が高い?
Q. 電子レンジ(2.45GHz)で水が温まる仕組みは?
Q. 「表皮厚み」と「電力半減深度」は何が違う?
Q. 入力データはどこに保存されますか?
注意事項
- 本ツールは平面波・垂直入射・線形等方均質媒質を仮定した近似計算です。
- 誘電率・透磁率・抵抗率は周波数依存性があり、本ツールでは入力値を一定として計算します。
- 導体の比透磁率 μr は1(非磁性)として計算しています。磁性体(Fe、Ni、フェライト)では別途補正が必要。
- 厳密な設計では電磁界シミュレーション(HFSS、CST等)の使用を推奨します。
関連する計算機
- 周期⇔周波数 変換計算機 ↗ — 周期 (T) と周波数 (f) の相互変換
- 周波数⇔波長 変換計算機 ↗ — 媒質速度から波長を計算
出典・参考
- NIST「CODATA Recommended Values」 — 物理定数(光速、真空透磁率等)
- 国際度量衡局(BIPM)「SI Brochure」
- 総務省 電波利用ホームページ
- 総務省「周波数帯ごとの主な用途と電波の特徴」 — UHF・SHF・ミリ波の用途と伝わり方
- Pozar, D. M. Microwave Engineering, 4th ed., Wiley, 2011 — マイクロ波工学の標準的教科書
- Balanis, C. A. Advanced Engineering Electromagnetics, 2nd ed., Wiley, 2012
最終更新日: 2026年9月25日
変更履歴
- 2026年9月25日: 解説・具体例・FAQを追加
- 2026/05/08 — 公開